OASIS News 3

オアシス・OASISニュース

1994(ねん)(がつ) No.3


「ジャピーノ」は私達(わたしたち)()いかける

    

「オアシス」代表(だいひょう)         田ヶ谷(たがや) 雅夫(まさお)

(がつ)17日付(にちづけ)のマニラ共同(きょうどう)ニュースによりますと、フィリッピン女性(じょせい)日本人男性(にっぽんじんだんせい)との(あいだ)()まれた「ジャピーノ」と()ばれる子供達(こどもたち)とその母親(ははおや)(たい)する面接(めんせつ)支援(しえん)のため、東京第二弁護士会所属(とうきょうだいにべんごしかいしょぞく)弁護団(べんごだん)グループ7(にん)がマニラ()りした、と(ほう)じています。

現在(げんざい)、フィリッピン女性(じょせい)日本(にほん)への出稼(でかせ)ぎケースが()えているのと、現地(げんち)日本人男性(にっぽんじんだんせい)無責任(むせきにん)にフィリピン女性(じょせい)性交渉(せいこうしょう)()つことがその原因(げんいん)ですが、(なか)には既婚者(きこんしゃ)でありながら、平然(へいぜん)現地(げんち)女性(じょせい)結婚届(けっこんとど)けを()悪徳漢(あくとくかん)もいて、最近(さいきん)マニラの日本大使館(にほんたいしかん)受理(じゅり)した婚姻届(こんいんとどけ)20件中(けんちゅう)、4(けん)重婚(じゅうこん)ケースだったといいます。同国(どうこく)はカトリック教徒(きょうと)大部分(だいぶぶん)であるため、通常離婚(つうじょうりこん)(みと)められないので、フィリッピン女性(じょせい)重大(じゅうだい)不利(ふり)(まぬが)()ません。

  (じつ)はこの(しゅ)問題(もんだい)は、第二次世界大戦(だいにじせかいたいせん)()わった(とき)日本(にほん)とアメリカの(あいだ)でもあったことでした。神奈川県大磯(かながわけんおおいそ)のエリザベス・サンダースホームのM.Sさんが、日米混血児(にちべいこんけつじ)養育(よういく)更生(こうせい)のために献身(けんしん)されたものです。

アメリカは戦後(せんご)日本(にほん)韓国(かんこく)・ベトナム・タイなどの軍事基地(ぐんじきち)に、それぞれ「アメラシアン」と(しょう)する混血児(こんけつじ)をお土産(みやげ)()いていきました。フィリッピンでも、オロンガポ海軍基地(かいぐんきち)とアンへレス空軍基地(くうぐんきち)だけで、その(しゅ)子供(こども)(やく)千人(せんにん)推定(すいてい)されています。

しかし アメリカはさすがに責任(せきにん)回避(かいひ)することなく、1982(ねん)米系混血児(べいけいこんけつじ)にアメリカ市民権(しみんけん)(みと)める法律(ほうりつ)成立(せいりつ)させ、(ちか)くフィリッピン国内(こくない)のアメラシアンにもアメリカ市民権(しみんけん)(あた)えるよう、 下院(かいん)法修正(ほうしゅうせい)(もと)めています。

さて (わたし)たちはここ数年(すうねん)、Y.Iと(しょう)するジャピーノ(7歳(ななさい))の救援活動(きゅうえんかつどう)(つづ)けています。

(かれ)父親(ちちおや)は、日本人(にほんじん)の「I」という()のビジネスマンです.マニラの水商売(みずしょうばい)のフィリピン女性(じょせい)仲良(なかよ)くなってY.I(くん)()ませたのですが、わずかの(かね)母親(ははおや)()(にぎ)らせて、日本(にほん)(もど)ってそれっきりになりました。Iが(おし)えてくれた日本(にほん)父親(ちちおや)電話番号(でんわばんごう)は、デタラメでした。

現在(げんざい)Y.I(くん)は、ケソン市内(しない)公立養護施設(こうりつようごしせつ)にいます。母親(ははおや)強盗(ごうとう)(はたら)いて刑務所入(けいむしょい)りしたためです。(かれ)肢体不自由(したいふじゆう)で、7歳(ななさい)(いま)乳母車(うばぐるま)()してもらって移動(いどう)します。(わたし)たちが(かれ)訪問(ほうもん)した(とき)施設(しせつ)のスタッフは、「(かね)さえあれば、この()義足(ぎそく)(つく)って(ある)かせてあげるのだけれど」と()いました。(すべ)てが、貧困(ひんこん)(むす)()きます。またそのスタッフは、「ここでY.Iはたった一人(ひとり)だけのジャピーノなので、みんなにバカにされたりいじめられている。こういう()はあんたの(くに)()(かえ)ってくれ」と正面(しょうめん)から()()されて、()うすべもありませんでした。

  戦後日本(せんごにほん)は、アジアヘの猛烈(もうれつ)経済的進出(けいざいてきしんしゅつ)(ともな)って、現地(げんち)(ひと)とさまざまな問題(もんだい)()()こしました。そして、日本人(にほんじん)はうやむやに責任回避(せきにんかいひ)していると、アジア各地(かくち)不信(ふしん)()っているのが現状(げんじょう)です。ジャピーノ問題(もんだい)は、中国残留孤児(ちゅうごくざんりゅうこじ)従軍慰安婦問題(じゅうぐんいあんふもんだい)とあい(つう)ずるある(しゅ)()いかけを、われわれに()げかけているのです。     

  (フィリピンの地図省略(ちずしょうりゃく))  


オアシス活動報告(かつどうほうこく)

1993(ねん)10(がつ)

   1)イラン(じん)Aさん 賃金未払(ちんぎんみばら)い   (いま)までイラン(じん)ネットの中心(ちゅうしん)にいてくれたAさんもついに賃金未払(ちんぎんみばら)いに。   
          同僚(どうりょう)Aさん12(がつ)31(にち)やっと()()てに7分勝(ななぶが)ち。1月帰国(がつきこく)

   2)イラン(じん)Mさん 賃金未払(ちんぎんみばら)い   12(がつ)おしつまると多発(たはつ)する未払(みばら)い。(ちゅう)(しょう)零細企業(れいさいきぎょう)、あるいは個人経営者(こじんけいえいしゃ)など雇用主(こようぬし)日本経済(にっぽんけいざい)のしわ()せを()けている(ひと)たち。その(なか)(かく)される外国人(がいこくじん)たち。雇用主(こようぬし)は「(へん)(ひと)たちに(あいだ)(はい)ってもらいたくない」と労基署(ろうきしょ)へ。

   3)中国系(ちゅうごくけい)マレーシア(じん)Sさん 賃金未払(ちんぎんみばら)い  H(むら)雇用主(こようぬし)行方不明(ゆくえふめい)何度(なんど)通訳(つうやく)労基署(ろうきしょ)仲介業者(ちゅうかいぎょうしゃ)とのやりとりの(すえ)、1月末(がつまつ)元請(もとう)けより未払(みばら)分支払(ぶんしはら)われ解決(かいけつ)。Sさんはほとんど日本語(にほんご)理解(りかい)できない。通訳(つうやく)のSさん何度(なんど)もありがとう。

   4)イラン(じん)Hさん 労災(ろうさい) ユンボを運転(うんてん)していて左腕骨折(さわんこっせつ)病院(びょういん)()れていってくれたが、しばらくして社長(しゃちょう)から「こんなことでは仕事(しごと)にならん。」とギプスを()ってしまう。労基署(ろうきしょ)病院(びょういん)などと連絡(れんらく)

   5)イラン(じん)Mさん 賃金未払(ちんぎんみばら)い   賃金未払(ちんぎんみばら)い、労基署(ろうきしょ)へ。日本語(にほんご)がよくできるので通訳(つうやく)(たの)んでいる。

   6)イラン(じん)Gさん 労災(ろうさい)  Gさんの(あに)国外退去(こくがいたいきょ)になった(とき)相談(そうだん)()たが、(かれ)もひどい火傷(やけど)()っている。

   7)結婚(けっこん)離婚(りこん)出産相談(しゅっさんそうだん)    フィリピン(じん)、タイ(じん)日本人(にほんじん)より数件(すうけん)

   8)イラン(じん)Mさん 交通事故(こうつうじこ) 女友達(おんなともだち)自動車(じどうしゃ)運転(うんてん)していて事故(じこ)()こした。バンパー(ぶん)20万円(まんえん)ぐらいの損害(そんがい)なのに、新車(しんしゃ)だから
         130万出(まんだ)せと()われている。強制送還(きょうせいそうかん)されるのはイヤだから(はら)わなければならないだろうか。

   9)帰国相談(きこくそうだん) タイ(じん)()()い、帰国(きこく)させたいがどうしたらよいか。

  10)通訳依頼(つうやくいらい)    共立病院(きょうりつびょういん)(タイ(じん))、山梨医科大(やまなしいかだい)(ペルー(じん))。

  11)ペルー(じん) 労災(ろうさい) 石和(いさわ)温泉(おんせん)(はたら)いていて転倒(てんとう)腰痛(ようつう)以前(いぜん)から長時間労働(ちょうじかんろうどう)をさせられ、(よる)宴会(えんかい)へも()された。

  12)イラン(じん)Rさん 継続中(けいぞくちゅう) 耳鼻咽喉科(じびいんこうか)手術完了(しゅじゅつかんりょう)頭部骨(とうぶこつ)整形手術(せいけいしゅじゅつ)をするか帰国(きこく)するか。

  13)イラン(じん)Aさん 継続中(けいぞくちゅう)市立病院(しりつびょういん)担当医師(たんとういし)との関係(かんけい)がうまくいかず、不満(ふまん)(おお)かったが、オアシスメンバーのケアにより、現在治療中(げんざいちりょうちゅう)
    労災認定(ろうさいにんてい)

  (イランの地図(ちず)、オアシス「(にち)・イ」交流会(こうりゅうかい)写真省略(しゃしんしょうりゃく)) 


オアシス「(にち)・イ交流会(こうりゅうかい)」に参加(さんか)して

イスラムの(まち)(かも)()独特(どくとく)雰囲気(ふんいき)()きだ。かって、(みぎ)(ひだり)もわからず、言葉(ことば)もできずにアジアや中東(ちゅうとう)街々(まちまち)(ある)(まわ)っていた。宿(やど)(おし)えられ、(めし)()わせてもらい、(たす)けられることばかりが(おお)かった。日本(にほん)(もど)ったら、今度(こんど)反対(はんたい)外国人(がいこくじん)親切(しんせつ)にしたいと漠然(ばくぜん)と、そしていつも(おも)いながら(たび)(つづ)けていた。

()る11(がつ)28(にち)甲府市(こうふし)国際交流(こくさいこうりゅう)センターで(おこ)なわれた県内在住(けんないざいじゅう)のイラン(じん)日本人(にほんじん)交流会(こうりゅうかい)参加(さんか)した。

全員(ぜんいん)()になって名前(なまえ)(おぼ)えたり、イラン(じん)日本人(にほんじん)のペアで自己紹介(じこしょうかい)をしたりといったゲームの後食(あとた)(もの)()(もの)(かこ)んで(たの)しい会話(かいわ)をもつことができた。イラン(じん)のなかには、日本語(にほんご)がはとんどわからない(ひと)もいたが、上手(じょうず)(はな)(ひと)(おお)く、(かれ)らを中心(ちゅうしん)双方(そうほう)とも(はなし)がはずんだ。

イスラム教徒(きょうと)といえば、一夫多妻(いっぷたさい)で、毎日(まいにち)(かい)のお(いの)りをし、アルコール・豚肉(ぶたにく)御法度(ごはっと)、そして男性(だんせい)立派(りっぱ)口髭(くちひげ)をたくわえている…といったステレオタイプなイメージがある。しかし実際(じっさい)(かれ)らはそんなイメージとは(すこ)しばかり(ちが)っていた。

Mさんは、オールバックの(かみ)(くび)から十字架(じゅうじか)のペンダントを()げ、(かわ)ジャンを()にまとっている。その姿(すがた)から国籍(こくせき)判別(はんべつ)不可能(ふかのう)(ちか)い。イラン(じん)のなかではビールを一番飲(いちばんの)む。そしてまた、よく(しゃべ)りとても社交的(しゃこうてき)である。

Aさんは、日本語(にほんご)がうまく、()のイラン(じん)のまとめ(やく)といった立場(たちば)でもある。柔道(じゅうどう)有段者(ゆうだんしゃ)というのはその(おお)きな(からだ)からもうなずける。今回(こんかい)交流会(こうりゅうかい)でイラン料理(りょうり)をご馳走(ちそう)してくれると、とてもはりきって、シシカバブの(くし)まで(つく)って用意(ようい)していた。しかし会場(かいじょう)では調理器具(ちょうりきぐ)使(つか)えず、この計画(けいかく)実現(じつげん)しなかったのは残念(ざんねん)だった。

Dさんも日本語(にほんご)がうまい。それどころか、ちょっととぼけたような(しゃべ)(かた)やその()()(かた)は、はとんどお(わら)いの世界(せかい)だ。自己紹介(じこしょうかい)ではたちまち人気者(にんきもの)になってしまった。体格(たいかく)もいい。イランではアマレスの選手(せんしゅ)だったという。 そんな(かれ)らだが、結婚(けっこん)していて配偶者(はいぐうしゃ)(もちろん一人(ひとり)だ)と()どもを(くに)(のこ)してきている(ひと)もいて、()まいを(たず)ねるとテレビの(うえ)写真(しゃしん)大事(だいじ)そうに(かざ)ってあったりする。()(もの)は、日本食(にほんしょく)結構何(けっこうなん)でも()べられるという(ひと)(おお)かったが、東京(とうきょう)まで()()しに()ったりして、比較的(ひかくてき)イランの食生活(しょくせいかつ)(ちか)いものを維持(いじ)しているようだ。しかし、祖国(そこく)(はな)れればビール程度(ていど)のアルコールをたしなむ(ひと)(すく)なくはない。ただ、メッカの方向(ほうこう)()いてのお(いの)りは、はとんど(おこ)なわれていないようだ。また、この交流会(こうりゅうかい)では(ひげ)()やしていたのは、イラン(じん)人中(にんちゅう)1人(ひとり)日本人(にほんじん)13人中(にんちゅう)2人(ふたり)日本人優勢(にほんじんゆうせい)だった。

交流会(こうりゅうかい)は、大盛況(だいせいきょう)()わった。一見(いっけん)とっつきにくそうな風貌(ふうぼう)(おお)(かれ)らだったが、ゲームをしたり(はな)したりしてみると、(こま)やかな気遣(きづか)いをしてくれる(ひと)あり、非常(ひじょう)にシャイな(ひと)ありで、()たり(まえ)のことだが、人間味溢(にんげんみあふ)れる普通(ふつう)(ひと)たちだった。 イラン(じん)からは「(つぎ)はいつやるんだ」と催促(さいそく)され、日本人(にほんじん)からは「今度(こんど)こそイラン料理(りょうり)()べれるんでしょうね」と(ねん)()され、(すで)次回(じかい)計画(けいかく)ももたれているようだ。とても(たの)しみである。

外国人(がいこくじん)街角(まちかど)(あつ)まっている姿(すがた)や、仕事(しごと)をしている姿(すがた)()にすることはあっても、言葉(ことば)(かわ)したりする機会(きかい)というものはなかなかない。そして、親切(しんせつ)にしてやろうなどという上辺(うわべ)だけの気持(きも)ちを()っていても、(たん)なる旅人(たびびと)ではなく生活者(せいかつしゃ)である(かれ)らが必要(ひつよう)としているものはそんなに簡単(かんたん)なものではないだろう。事実(じじつ)(かれ)らの(なか)にはもっと切実(せつじつ)問題(もんだい)直面(ちょくめん)している(ひと)もおり、だからこそ真剣(しんけん)(ちから)()さなくてはならないといえる。

在留(ざいりゅう)就労(しゅうろう)資格(しかく)といった制度上(せいどじょう)問題(もんだい)はあっても、山梨(やまなし)のイラン(じん)たちは、(わたし)たちと(おな)じ、この()()市民(しみん)なのだと(おも)う。そして、お(たが)いが相手(あいて)のことを身近(みじか)(ひと)として(かん)じることがもっと必要(ひつよう)なのだ。そのために、今回(こんかい)のような(かい)()たす役割(やくわり)非常(ひじょう)(おお)きいと(かん)じた。(ア) 


『アジアから()日本(にほん)報告(ほうこく)

山梨外国人(やまなしがいこくじん)ネットワーク・オアシス結成(けっせい)周年記念講演会(しゅうねんきねんこうえんかい)
1994(ねん)11(がつ)14(にち)(おける) 県立青少年会館(けんりつせいしょうねんかいかん)

()る11(がつ)14(にち)甲府市(こうふし)県立青少年会館(けんりつせいしょうねんかいかん)において、“アジアの(おんな)たちの(かい)”のメンバーであり朝日新聞編集委員(あさひしんぶんへんしゅういいん)でもあるY.Mさんを(むか)え、「アジアから()日本(にほん)」と(だい)して講演会(こうえんかい)(ひら)かれました。県外(けんがい)からや(わか)(ひと)参加者(さんかしゃ)(おお)く、(やく)100(めい)(ひと)たちが熱心(ねっしん)にY.Mさんの(はなし)(みみ)(かたむ)けました。

Y.Mさんは、まず“アケミ”という()朝鮮従軍慰安婦(ちょうせんじゅうぐんいあんふ)(えが)いた()と、(おな)じ“アケミ”と()ばれ、現在(げんざい)新小岩事件(しんこいわじけん)」の被告(ひこく)一人(ひとり)として法廷(ほうてい)()たされているタイ人女性(じんじょせい)(はなし)紹介(しょうかい)しながら、50(ねん)という歳月(さいげつ)(なが)れているのに、自分自身(じぶんじしん)のアイデンティティーを(うば)われ、日本人男性(にっぽんじんだんせい)(せい)奴隷(どれい)にされた二人(ふたり)の“アケミ”さんの(あいだ)にある問題(もんだい)本質(ほんしつ)はまったく(おな)じであることを指摘(してき)しました。さらに、戦争中(せんそうちゅう)日本(にほん)がアジアの人々(ひとびと)にしたことに(たい)(なん)(つぐな)いもしてこなかったことを痛感(つうかん)していることを、ご自身(じしん)体験(たいけん)もまじえながら(はな)されました。

Y.Mさんが従軍慰安婦問題(じゅうぐんいあんふもんだい)関心(かんしん)をもつきっかけになったのは、1973(ねん)韓国(かんこく)女子学生(じょしがくせい)買春観光反対運動(かいしゅんかんこうはんたいうんどう)がおこった(とき)だそうです。Y.Mさんは、「従軍慰安婦問題(じゅうぐんいあんふもんだい)は、現在(げんざい)人身売買(じんしんばいばい)につながっている」と強調(きょうちょう)。さらに「日本(にほん)世界最大(せかいさいだい)人身売買(じんしんばいばい)(くに)であり、その非人間的(ひにんげんてき)なしくみがこの(くに)では発達(はったつ)してきたという事実(じじつ)。」を直視(ちょくし)すべきとも主張(しゅちょう)しました。つづけて、こうした人身売買大国(じんしんばいばいたいこく)になってしまった日本社会(にほんしゃかい)背景(はいけい)として、歴史的(れきしてき)経過説明(けいかせつめい)をし、一般(いっぱん)女性(じょせい)売春(ばいしゅん)する(商売(しょうばい)とする)女性(じょせい)区別(くべつ)しようとする(かんが)(かた)があることも指摘(してき)しました。

それでは 何故彼女(なにゆえかのじょ)らは日本(にほん)にくるのか。(おく)()(くに)情況(じょうきょう)について、タイの場合(ばあい)、バンコックを中心(ちゅうしん)とする一部地域(いちぶちいき)経済発展(けいざいはってん)(かげ)都市(とし)農村(のうそん)格差(かくさ)()める(もの)(まず)しい(もの)との格差(かくさ)(ひろ)がってきていること。また、山岳民族(さんがくみんぞく)北部地方(ほくぶちほう)では少女売春(しょうじょばいしゅん)麻薬(まやく)、エイズの蔓延(まんえん)などの問題(もんだい)深刻化(しんこくか)している一方(いっぽう)で、日本企業(にっぽんきぎょう)などの森林伐採(しんりんばっさい)日本向(にほんむ)けの商品作物(しょうひんさくもつ)生産(せいさん)などがおこなわれており、住民(じゅうみん)生活(せいかつ)圧迫(あっぱく)している現状(げんじょう)紹介(しょうかい)されました。また、リゾート開発(かいはつ)もすごい(いきお)いで(すす)んでおり、観光立国(かんこうりっこく)といわれてはいるが、売春(ばいしゅん)ツアーなどの問題(もんだい)もひきおこされている実態(じったい)指摘(してき)しました。

さらに、フィリピンの場合(ばあい)についても“ゼネラルサントス”という(まち)(れい)にとりながら、日本向(にほんむ)けのマグロが毎日(まいにち)10トン、アメリカの多国籍企業(たこくせききぎょう)によるエビの養殖場(ようしょくじょう)(その8(わり)日本向(にほんむ)け)、またテラピアという(さかな)養殖池(ようしょくいけ)などが町中(まちじゅう)にひろがり、住民(じゅうみん)がその土地(とち)から()()てられ、(まず)しい生活(せいかつ)()いられている現状(げんじょう)(はな)されました。また、サラワクでの熱帯材(ねったいざい)伐採(ばっさい)についても、先住民(せんじゅうみん)生活(せいかつ)生態系(せいたいけい)破壊(はかい)をひきおこしている実態(じったい)について言及(げんきゅう)しました。

最後(さいご)に、Y.Mさんは「国連女性(こくれんじょせい)の10年運動(ねんうんどう)(なか)では、暴力(ぼうりょく)問題(もんだい)十分(じゅうぶん)にとりあげられなかったという反省(はんせい)から、今女性(いまじょせい)への暴力(ぼうりょく)“ジェンダーバイオレンス”は世界的(せかいてき)注目(ちゅうもく)されている」としながら,「人権(じんけん)先進国(せんしんこく)とはほどとおい日本(にほん)を、どう人権(じんけん)(まも)(くに)にしてゆくのか。そして、女性(じょせい)問題(もんだい)男性(だんせい)問題(もんだい)という認識(にんしき)をもって、男性(だんせい)もいっしょにこうした問題(もんだい)にとりくんで()くべき」と主張(しゅちょう)して、講演(こうえん)()わりました。

東南(とうなん)アジア諸国(しょこく)実態(じったい)を、実際(じっさい)にその()でみてきているという体験(たいけん)(うら)づけられた(はなし)だけに、(むね)にずしっとくるものがありました。

滞日外国人(たいにちがいこくじん)支援(しえん)だけにとどまらず、(おく)()(くに)実態(じったい)理解(りかい)するとともに、日本人(にほんじん)として(なに)ができるのかを真剣(しんけん)(かんが)えざるをえなかった講演会(こうえんかい)でした。

(あ)

賃金未払(ちんぎんみばら)い・労災未補償問題(ろうさいみほしょうもんだい)構図(こうず)

オアシスに()せられる相談(そうだん)のうち、賃金(ちんぎん)未払(みばら)いや労働災害(ろうどうさいがい)補償(ほしょう)不十分(ふじゅうぶん)であることを(うった)えるものが()えています。(おお)くは工場(こうじょう)工事現場(こうじげんば)などで(はたら)くイラン人男性(じんだんせい)などからのものです。(わたし)担当(たんとう)した事例(じれい)をもとにトラブルに共通(きょうつう)する構図(こうず)報告(ほうこく)します。

賃金未払(ちんぎんみばら)いの場合(ばあい)、その理由(りゆう)は、@手元(てもと)支払(しはら)(かね)()い、元請(もとう)けからの支払(しはら)いが遅延(ちえん)している、など「()(そで)()れない」というもの((ただ)し、雇用主(こようぬし)説明(せつめい)本当(ほんとう)だとすればですが)、A当人(とうにん)(きゅう)に「やめたい」といい、仕事(しごと)(いそが)しかったので慰留(いりゅう)したにもかかわらずやめていったため、感情(かんじょう)(がい)し、あるいは、ペナルティーとして支払(しはら)わないというもの、などが(おお)いようです。

@は、雇用主(こようぬし)としての義務(ぎむ)()たしていない勝手(かって)理屈(りくつ)で、雇用主(こようぬし)もそのことを(うし)ろめたいと(かん)じている部分(ぶぶん)があるので、(ねば)(つよ)交渉(こうしょう)すれば、「元請(もとう)けからの入金(にゅうきん)があった時点(じてん)(かなら)(はら)う」などと先方(せんぽう)()れます。しかし、Aのケースは、いささかやっかいです。K弁護士(べんごし)(はなし)では、従業員(じゅうぎょういん)が、ある日突然辞(ひとつぜんや)めていっても法的(ほうてき)には問題(もんだい)()い((ただ)し、そのことで会社(かいしゃ)重大(じゅうだい)損害(そんがい)(こうむ)った場合(ばあい)はその賠償(ばいしょう)をさせられることもある)そうですが、使用者(しようしゃ)としては、(きゅう)()められたために、その(ぶん)ほかの(ひと)残業(ざんぎょう)などでカバーせざるを()なくなるので、()めた(ひと)(たい)して反感(はんかん)()いているからです。()めた当人(とうにん)から(はなし)()くと、()めるだけの事情(じじょう)があるのですが、使用者(しようしゃ)気持(きも)ちもわからないではありません。こういう場合(ばあい)理屈一辺倒(りくついっぺんとう)では、使用者(しようしゃ)態度(たいど)軟化(なんか)させないので、「手持(ても)ちの(かね)(すこ)しもない」「(のこ)してきた家族(かぞく)仕送(しおく)りを()っている」などと(実際(じっさい)にその(とお)りなのです)人情(にんじょう)(うった)えたりもしてみます。

また、(いま)未解決(みかいけつ)のあるケースでは、言葉(ことば)()(ちが)いがトラブルの原因(げんいん)になっています。(きゅう)()めると()()したイラン人男性(じんだんせい)Mさんに、雇用主(こようぬし)が「そんなこんじゃあ、(今月分(こんげつぶん)の)給料(きゅうりょう)(はら)えないよ」といい、Mさんは「いい、大丈夫(だいじょうぶ)」と(こた)えました。雇用主(こようぬし)は「今月分(こんげつぶん)給料(きゅうりょう)一切払(いっさいはら)わない」というつもりで()ったらしいのですが、Mさんは「給料日(きゅうりょうび)には支払(しはら)うが、(いま)すぐは無理(むり)」という意味(いみ)()()りました。労災(ろうさい)場合(ばあい)は、さらに問題(もんだい)複雑(ふくざつ)です。外国人(がいこくじん)(やと)っている企業(きぎょう)は、たいていの場合(ばあい)(かれ)らの(ぶん)まで労災保険(ろうさいほけん)加入(かにゅう)していません。そのため、(かれ)らが事故(じこ)にあった場合(ばあい)は、雇用主(こようぬし)がその医療費(いりょうひ)社会保険(しゃかいほけん)適用(てきよう)されないので全額自己負担(ぜんがくじこふたん))を支払(しはら)います。しかし、何度(なんど)通院(つういん)させるうちにそれを負担(ふたん)(かん)じるようになり、しまいには病院(びょういん)()れていくことをしぶります。それで(こま)った外国人(がいこくじん)がオアシスに相談(そうだん)してくるのです。

労災保険(ろうさいほけん)適用(てきよう)されれば、医療費(いりょうひ)全額(ぜんがく)と、けがによる休業中(きゅうぎょうちゅう)賃金(ちんぎん)六割(ろくわり)から八割(はちわり)保険(ほけん)支給(しきゅう)されるので、(わたし)どもが交渉(こうしょう)する場合(ばあい)も まずそれと(おな)じだけの補償(ほしょう)当人(とうにん)()けられるように、さかのぼって労災扱(ろうさいあつか)いにするか、その(ぶん)会社(かいしゃ)負担(ふたん)するかを雇用主(こようぬし)要求(ようきゅう)します(この(へん)法律(ほうりつ)をよく勉強(べんきょう)しておくことが交渉者(こうしょうしゃ)には必要(ひつよう)だと痛感(つうかん)しています)。その要求(ようきゅう)(たい)してどう(おう)じるかは、その雇用主(こようぬし)誠意(せいい)によります。労災(ろうさい)加入(かにゅう)していない(うし)ろめたさから、比較的(ひかくてき)すんなり(おう)じる(ひと)もいれば、(わたし)たちがそういう権利(けんり)主張(しゅちょう)をすることを毛嫌(けぎら)いする(ひと)もいます。「不法就労(ふほうしゅうろう)」の外国人(がいこくじん)(やと)っている、あるいは、労災(ろうさい)加入(かにゅう)していないことから()(うし)ろめたさからか、はたまた日本的(にほんてき)な「お上意識(かみいしき)」からか、問題(もんだい)労働基準監督署(ろうどうきじゅんかんとくしょ)()られることを(いや)がる(てん)はどの雇用主(こようぬし)にも共通(きょうつう)しています。

ところで、ある時雇用主(ときこようぬし)から(つぎ)のようなことを()われて、ハッとしたことがあります。「(たし)かにあなた(かた)のような(ひと)必要(ひつよう)だが、(なん)でもかんでも事務的(じむてき)労災扱(ろうさいあつか)いにすれば(こと)がすむと(おも)ったら大間違(おおまちが)いだ。」つまり、(やと)(がわ)からすれば、労災保険(ろうさいほけん)社会保険(しゃかいほけん)加入(かにゅう)しないで賃金(ちんぎん)(やす)(おさ)えられることに外国人(がいこくじん)(やと)ううまみがあるのに((ただ)しこれは、いわゆる3K(てき)仕事(しごと)敬遠(けいえん)されて、求人(きゅうじん)しても日本人(にほんじん)(あつ)まらない現実(げんじつ)(たな)()げた議論(ぎろん))、事故(じこ)労災扱(ろうさいあつか)いにされ、さかのぼって保険料(ほけんりょう)()られては、(つぎ)からはもう外国人(がいこくじん)(やと)いたくなくなる。あなたたちのやっていることは(なが)()()たら日本(にほん)(はたら)外国人(がいこくじん)のためにはならない、と()うのです。

(たし)かに、現行法(げんこうほう)では「不法就労(ふほうしゅうろう)」になってしまう外国人(がいこくじん)と、それにつけこんで日本人(にほんじん)よりいくらか人件費(じんけんひ)(やす)()さえられる使用者(しようしゃ)は、()ちつ()たれつの微妙(びみょう)関係(かんけい)にあります。なのに、労災(ろうさい)適用(てきよう)するなどして(こと)をおおっぴらにされては、その微妙(びみょう)関係(かんけい)(くず)れる、とその雇用主(こようぬし)()いたかったのでしょう。そうかと()って、(はたら)いた(ぶん)給料(きゅうりょう)がもらえなかったり、仕事中(しごとちゅう)にけがをしても十分(じゅうぶん)療養(りょうよう)()けられなかったりして、外国人(がいこくじん)()寝入(ねい)りしているのを、「人権(じんけん)ネットワーク」として見過(みす)ごすわけにはいきません。そもそも、外国人労働者受(がいこくじんろうどうしゃう)()れに(たい)する政府(せいふ)姿勢(しせい)が、実体(じったい)とあわない中途半端(ちゅうとはんぱ)無責任(むせきにん)なところに(おお)きな問題(もんだい)があるのですが、雇用主(こようぬし)のその言葉(ことば)は、外国人労働者問題(がいこくじんろうどうしゃもんだい)(むずか)しさを(あらた)めて(わたし)認識(にんしき)させました。

文責(ぶんせき)  M.Y)

新聞(しんぶん)から


人権(じんけん)(かんが)える(4)・(いま)職場(しょくば)で・外国人労働者(がいこくじんろうどうしゃ)・「ケイヤクデキナカッタ、イイカイシャダッタケド…」・事故(じこ)失職(しっしょく)住居(じゅうきょ)も…文句(もんく)()えず

毎日新聞(まいにちしんぶん)・1994(ねん)(がつ)11(にち)


タイ女性(じょせい)全面勝訴(ぜんめんしょうそ)山梨(やまなし)売春強要(ばいしゅんきょうよう)損害賠償(そんがいばいしょう)

新聞(しんぶん)・1993(ねん)11(がつ)27(にち)


不法残留(ふほうざんりゅう)の27人摘発(にんてきはつ)県警(けんけい)東京入管(とうきょうにゅうかん)

新聞(しんぶん)・?(ねん)(がつ)(にち)


編集後記(へんしゅうこうき)

ようやく3(ごう)ができあがりました。(ねん)回発行(かいはっこう)というのも意外(いがい)大変(たいへん)です。(いそが)しい(なか)、ご協力(きょうりょく)ありがとうございました。次号(じごう)では、タイ人女性(じんじょせい)損害賠償請求関係(そんがいばいしょうせいきゅうかんけい)報告(ほうこく)などを中心(ちゅうしん)に、5(がつ)か6月頃(がつごろ)発行(はっこう)予定(よてい)しています。(おそ)くなりましたが、今年(ことし)もよろしくお(ねが)いいたします。(A)
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