OASIS News 1
オアシス・OASISとは、砂漠の中の緑地、水と憩いの場所のことです。私たちの山梨外国人人権ネットワークは、いまわが国で生活しながらその基本的な人権を侵されつつある多くのさまざまな外国人にとって、慰めと安心感の場でありたいと願い、昨年の10月24日に皆さまのお力添えをいただいて発足しました。
わたしたちの身の回りに、最近多くの外国人を目にすることが多くなってきています。長い間、日本は比較的外国人との接触をせずに過ごしてきました。しかし、国際化の進展にともない、日本人だけの日本などあり得ない現状にあり、この傾向は今後さらに進行することと考えられます。いま、外国人問題を考えることは、とかく閉鎖的だった日本にとって、明治以来第二の「平成維新」を迎えつつあるのだと言って過言ではありません。
ところが、現在わが国に在留する外国人、特に外国人労働者の基本的人権は、心ない一部の悪徳日本人によって平然と踏みにじられ即刻救援を必要とするケースが山梨県内にも山積しています。まことに恥ずかしいことながら、関東甲信越静地区で、この種の活動団体が未結成だったのは本県だけでした。昨年4月に群馬県高崎市で第2回外国人労働者人権フォーラムが開催され約350名の参加があった中で、本県からの出席者はわずか3人というありさまだったのです。
では、山梨県には外国人問題など何も心配するような事態はなかったのかといえば、そんなことはありません。観光地を多くもつ本県では、信じられないような性風俗産業従事女性外国人労働者の搾取・迫害が相次いで発生しています。また毎日の生活の中で、いわゆる3K労働に従事する外国人労働者を見かけない日は無いはずで、かれらの賃金未払いや労働契約違反問題は、バブル不況の中で一段と激増・悪化しています。
わたしは、この挨拶のはじめに日本は比較的外国人との接触なしに進んできた、と言いましたが、もしかしたらそれは大きな認識違いかもしれません。明治維新以降の日本帝国主義は、多くの開発途上外国人との関わりを持ち続けつつ、かれらを利用し、かれらを圧殺することで現在に至っているのかもしれません。「オアシス」が発足当初「外国人労働者人権」をテーマにしていたのが、「外国人人権」と改めたのはその辺の配慮と反省があってのことです。
わたしたち有志数名が昨年4月に初めて甲府山梨YMCA駅前ブランチで顔合わせをしてから、結成総会を開いたり機関紙を発行する以前に、緊急救援ケースの処理のため全力投入せざるを得なかったこの1年は誠に慌ただしいものがありました。幸い多くの県民の皆様や関係機関、それに好意ある報道機関の皆さまに支えられ、励まされてどうやらここまでやってきましたが、わたしたちの力の限界や空しさを痛感することも再々のありさまです。これからもどうかよろしくお力添え下さい。
なお、わたしたちの活動はあくまでやむにやまれぬボランタリーなものであり、偏った政治的信条や宗教的信念にもとずくものでは決してありません。この世の中に放っておけない不正が横行することにどうしても我慢できない、ごく普通の「県民連合」です。学校の教師・印刷労働者・福祉従事者・医療労働者・主婦・議員・弁護士・会社員・自営業など、種々様々な人々が、この世に正義がもたらされることを願ってそれぞれの出せるかぎりの力と知恵を結集しているに過ぎないのです。どうかこれからも、ご くふつうの県民の皆さまの気軽な参加を期待しております。それぞれの立場で、出来る限りのことをしていただければ、それで充分なのです。
もう一言。この「オアシス」は、決して気の毒な外国人を救援するだけの「お助け寺」ではありません。高齢化と高度の経済変革のさなかにある我が国にとって、外国人との共生問題は実は「われわれ自体」の問題であります。いろいろな方にお出でいただき、学習会(セミナーやフォーラム)を開催してきたのも、そのためです。ぜひご一緒にわたしたちの未来をみつめ共にしあわせに生きる道を模索するため、ひとりでも多くの皆さまの「オアシス」へのご参加をお待ちしております。
1992. 2.?? | I医師の呼びかけで顔合わせ |
4.17 | 外国人労働者の為の山梨ネットワーク作りの為の第1回会合 |
於山梨YMCA | |
結成の為の意志確認 | |
5. 1 | 第2回準備会 |
5. 6 | 第3回準備会 |
5.13 | 第4回準備会 |
5.15 | アピールする為の記者会見 |
5.23 | 第1回山梨外国人労働者人権フォーラム |
パネリスト | |
Wさん(カラバオの会) | |
Tさん(そだち園) | |
Iさん(MSW) | |
バングラデシュの労働者 | |
参加 約160名 | |
於ボランティアセンター | |
6. 1 | 第5回準備会 |
6.15 | 第6回準備会 |
6.25 | 第7回準備会 |
7.12 | 第2回フォーラム |
4月よりの活動について | |
スピーカー Yさん、Fさん | |
7.20 | 第8回準備会 |
8.17 | 第9回準備会 |
8.28 | 第10回準備会 |
9. 8 | 第11回準備会 |
9.16 | パンフレット作成会議 |
9.28 | 第12回準備会 |
10.5 | 外国人との共生を目指して |
連続セミナー第1回 | |
「外国人労働者をとりまく問題」 | |
講師 H山梨労働基準監督官 | |
於 甲府カトリック教会 | |
10.13 | 第13回準備会 |
10.19 | 連続セミナー第2回 |
「アジアの女性をくいものにする日本の現状」 | |
講師 横浜「みずら」ディレクターAさん | |
10.24 | 山梨外国人人権ネットワーク「オアシス」結成記念講演及び総会 |
「在日外国人との共生を目指して −今、私たちに問われているもの−」 | |
講師 Mさん(HELPディレクター) | |
11. 9 | 連続セミナー第3回 |
「在日外国人の医療問題」 | |
講師 Oさん(TILL) | |
11.30 | 連続セミナー第4回 |
「セミナーを終えて」 | |
講師 Sさん(国際交流センター) | |
1993. 2. 1 | 連続セミナーU第1回 |
「日本人売春ツアーの実態」 | |
講師 Uさん(元旅行会社勤務) | |
於日本キリスト教団 甲府教会 | |
2.15 | 連続セミナーU第2回 |
「日本人と結婚した外国人女性の現状」 | |
講師 Aさん | |
3. 1 | 連続セミナーU第3回 |
「外国人労働者弁護団 LAFREの活動から」 | |
講師 Hさん(LAFRE) | |
3.15 | 連続セミナーU第4回 |
「在日帰国児童教育の現場から」 | |
講師 Iさん(新出小 教諭) |
1992.4.29〜30 | 「第2回関東甲信越外国人労働者人権フォーラム」 |
於 高崎市 | |
Tさん、Tさん、Tさん出席 | |
11.17 | 県職員の研修会でOさん講演 |
11.24 | 県立女子短大でOさん講義 |
12.13 | 「外国人労働者の人権を守る12.13集会」 |
於 東京 渋谷 山手教会 | |
Kさん、Kさん 出席 |
1992.4 | 石和在住フィリピン女性重婚問題 |
6. 2 | タイ女性3名(スナックから逃げ出したが、入管・大使館から相手にされず知りあいをたよって来甲)ヘルプにお願いする[カラバオ経由] |
6.11 | タイよりFAXが「アジアの女たちの会」を通し女性の救出を依頼される |
13 | 竜王町のスナック「M」より3名救出. カラバオW牧師との協議の結果、横浜「みずら」にお願いする |
7.14 | スナック「J」のタイ女性(Mより救出の女性の姉他3名)より救出依頼の電話. 救出 |
15 | 「R」で働かされている女性の方が悲惨と訴えられRの女性2名救出 |
16 | Jの女性はヘルプヘ. Rの女性はみずらにお願いする |
7.23 | O弁護士と協議. 賃金不払いの請求をするために委任状を取りに行って頂く |
8. 4 | パキスタン男性より労災. 「つくばアジアの労働者と連帯する会」のMさんよりFAX. フィリピン女性M.R逮捕、留置の件 |
11 | M.Rの件で「119ネットワーク」のOシスターと打合せ電話 |
11 | 「スナックJ」よりタイ女性救出 |
13 | シスター来甲 M.Rに刑務所にて面会. 山梨YMCAにて弁護士と打合せ |
18 | タイ女性T 共立病院にて出産. 帰国その他相談 |
20 | M.Rより電報 面会 |
27 | カラバオの会Hさん来甲,N.Fの相談面会 |
9.1 | M.R 保釈申請認められ、Oシスター来甲 |
8 | M.R 第1回裁判 |
22 | M.R 第2回裁判 判決言い渡し |
10.22 | 甲府署ヘタイ女性に対する売春強要で逮捕されたOの追求と女性の保護を申し入れ |
11.1 | 虫垂炎で入院中に逮捕されたタイ女性に面会 |
2 | 〃 |
4 | 〃 |
9 | 浜松在住のネパール人Gより賃金不払いについて |
14 | 中国人医大生Kさんより契約違反言葉による差別について |
11.20 | 「生命と権利を守る会」よりイラン人Uの賃金未払いの相談 |
12.1 | 国際交流センターFさんより相談された転職について |
7 | T整骨医より患者の相談について |
8 | 男性Mより友人のタイ女性の結婚について |
28 | イラン人男性3名賃金未払い |
27 | Kより上諏訪より逃げてきたフィリピン人女性と自分のフィリピン人の奥さんと子どもについて. また結婚の書類の日本語訳について |
28 | 山梨市のSよりイラン人Jについて |
1993.1.5 | フィリピン人D夫妻契約違反アパートについて |
8 | Aより日系ペルー3世について |
8 | ベランダから墜落したタイ女性. W県立C病院に収容☆ |
2.10 | 「命と権利をかちとる会」よりイラン人Rさん入院の件で依頼電話 |
2.15 | 「119ネットワーク」より電話. バングラデシュ人の賃金未払いについて対応依頼 |
2.20 | ボランティア大会展示準備 |
21 | 〃 |
21 | イギリス人就職滞在の相談 |
2.22 | タイ女性W車椅子で帰国につき付添って帰国させる |
2.27 | タイ女性Rを背負いこんだスナック経営者・Rの入院の相談 |
3.10 | タイ女性Wについての病院の証拠保全(1993.3まで) |
「オアシス」には専従職員は勿論おりませんので記録に残されていないケースもありますし、これらのケースに関しては相談が終了するまでに関係各機関やネットワークの方々との連結など計り知れない対応が必要とされました。当然未だ未解決のケースも対応中のケースもあります。全く手探りの状態の中から発足前より約一年よく持ちこたえたと思います.多くの先輩グループとりわけ横浜「みずら」「カラバオの会」東京「ヘルプ」の皆様にはお世話になっています。これからはケース対応の為の学習会などで 会員が共に学び合い共に経験をわかちあって、一つでも良い結果が生まれるようにしていきたいと思います.皆様のご支援を宜しくお願い致します.(C.N)
昨年6月に、「アジアの女たちの会」より竜王町のスナック「エム」で売春を拒否しているため暴行を受けているタイ女性の救出依頼を受けて救出して以来、県内のスナックより救出した人11名、タイ人同士のネットワークで保護した他県の4名、病気・けがなどで援助した人3名、自力で大使館等へ逃げ込みその後帰国を援助した人2名、警察に逮捕された後面会や損害賠償請求などの支援を行った人3名、延ベ23名のタイ女性を救出、保護、援助してきました。
すでに学習会などで報告済みですが、彼女たちの話を総合すると、まずタイ国内で、リクルーターによりバンコクに集められ(23名中売春と分かっていた人8名不明3名他は店員等と言われていた)、タイのブローカーの手により成田に連れてこられ、日本のブローカーにより各店等へ買い取られたり、派遣されたりしています。店に着いて初めて自分が多額の借金(約300万〜380万円)をしていると言われ、逃げたら殺す、タイの親まで迷惑がかかるなどと脅かされています。給仕については一銭もも らえず、自分の食費や住居費、さらには、太った、客に愛想が悪かった、カラオケが終わっても拍手しなかった、無断で外に出た、客にコンドームを使うように言った等、それぞれ5千円 から2万円の罰金が決められている店もあり、すべて借金に加算されるため売春をしないかぎり絶対に借金がなくならないシステムになっています。中には売春を拒否したためにやくざに輪姦されたり、サービスが悪いといって洋酒のびんを性器に突っ込まれた例もあります。更に私たちが救出した女性の顔写真を配り、発見者には150万円の賞金を出すといったこともなされています。また警察官も客として出入りしているため怖くて警察にも逃げられないとの証言もありました。
年齢は15才から36才で、特に15才の少女は痛くて出来ないと言うと最初の店の店主から殴るけるの暴行を受け、更に甲府の店では客ができないと怒って殴られ無理やりされたと言っていました。これはレイプに他なりません。サラリーマン風の客だったとのことですが、普段は市民生活を営み、その一方で平然と買春し、金を払ったのにさせないといって中学生に暴行を加える・・・。今回警察の捜査に協力した事件においても、彼女たちは「出入国管理法違反、売春防止法違反」となりました。「人身売買」の被害者であるにもかかわらず、日本の法律では罰せられるのです。確かに第3世界から来ている女性の多くは風俗産業に従事しており、売春を業(なりわい)としている人々もいます。彼女たちに対し、蔑(さげす)み知らん顔をして多くの日本人が通りすぎて行きます。しかし買春をしている日本の男達、「やーね」と言いながらそのことを黙認している女たちはどうでしょうか。責任はないのでしょうか? 彼女たちを買った男の誰一人として有罪にされないのです。やむを得ず売春することよりも自らの意志で買春することのほうがよほど恥ずべきことであり、人間に対する冒涜(ぼうとく)であるにもかかわらず、この国の法と多くの人は買春を黙認することにより、「買春文化」とも言うべき文化を形成してしまったのではないかとすら思えます。
日本で稼ぎたいと考える第三世界の女性(日本と第三世界の関係は別の機会に譲るとして)に対して唯一大きく開いているのがオーバーステイによる風俗産業・暴力団のルートによる売春だけなのです。そしてようやく警察や入管・大使館へ逃げ込んだとしても帰国費用がなければ帰ることもできないのです。ODAに注ぎ込む金はあっても、彼女たちへの帰国予算は一切ありません。オアシスで保護し、やくざの網をくぐって移動し、東京の大使館でパスポートの再発行を行い、成田から帰国するまでに要する費用は一人当たり10万円前後(もちろん人件費は一切入れないで)です。「みずら」「ヘルプ」という先輩団体に多くを依存しています。資金面の充実が必要です。(文責Y)
言葉 ことば ことば !
なんといっても 言葉です。医者との話し合い、仕事のこと、権利のこと、弁護士のこと、帰国のこと、何が何でも通じさせねば、あせればあせるほど通じません。時には電話での通訳をお願いしたり、東京まででかけた り、Nさんに弁護士と一緒に面会に行くのに県外から来てもらったりしたこともあります。幸いなことにタイ語に関してはすばらしい通訳のAさんにめぐり合えました。言葉も上手ですがそれ以上に人間性がすばらしく、ともすれば通訳をする人はオーバーステイの同国人に対して見下すようなところがありますが、むしろ一緒になって問題を解決しようという姿勢が見られ、相手も頼りにするようになっています。下半身不随になってしまい車椅子で帰国するWさんにつき添ってタイまで送る仕事までして頂きました。彼女はいつも「私の国の人のためにすみません」と言います。私たちのほうこそ「いつもすみません」。この努力抜きにはこの間の活動は不可能でした。そんな彼女に対し、心ない人々からさまざまな「侮辱的な言葉」が投げかけられ、彼女を傷つけています。人の価値は地位やお金の中にはありません。Aさんごめんなさい。懲りずによろしくお願いします。いつも協力下さるAさんの家族のみなさん、本当にありがとうございます.これからも助けて下さい。
編集後記
オアシス結成から7ヶ月やっと小さなニュースをお届けることにできることになりました。長い間、お待たせしてスミマセン。ケースに追われ、手が付けられなかったのが現状です。今後は定期的に発行しますので、よろしくお願いいたします。(我こそは、という会員がいらっしゃいましたらぜひどうぞ)
長引く不況の為か、昨年末から賃金不払いの――それもかなり多額で、働かせっぱなしで払 わない――の相談が増えています.これら現在小さな「オアシス」が抱えているケースなんと12件!!
とにかく がんばらなくては…。(あ)